遙か夢参
□私の王子様
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同じ世界から来たよしみ、ということで望美ちゃんに同行させてもらえることになった私は、目下リズヴァ―ンさんにアプローチ中だった。
「リズヴァ―ンさん、今日の夕飯は何がいいですか?」
「・・・・・・なんでもいい。食べられるものがあるだけありがたいからな」
そっけなく返されて怯みそうになりながらも私は慌ててにこりと笑みを作る。
「どんなものが好きですか? 魚とかお肉とか、煮物とか焼き物とか」
「好き嫌いは特にない」
「お前な、隣にいる俺にもちっとは聞いたらどうなんだ?」
「将臣くんこそなんでもいいでしょ?」
「ひでぇやつ…」
「あ、名無しさんちゃんも将臣くんもここにいたんだ!」
「望美ちゃん!」
「神子、今から鍛錬か?」
「そうなんです。九郎さんと」
「私も行こう」
「え、いいんですか?」
望美ちゃんが戸惑ったように私とリズヴァ―ンさんを交互に見た。
「あ、一緒に行ってもいい?」
「いいけど、つまんないかも?」
「大丈夫!」
こっくりと頷いて二人の後を追いかけると九郎さんが待っていた。
「名無しさん? お前も稽古をするのか?」
「いいえ、私は見学だけです」
「そうか…」
「九郎、神子、構えなさい」
「「はいっ」」
それから稽古が始まったんだけど、リズヴァ―ンさんは私の方をちらりとも見ない。
まぁ稽古なんだから当たり前なんだけど、アプローチをはじめてからずっとそんな調子で。
―――リズヴァ―ンさんは望美ちゃんしか見ない。