遙か夢参
□見えない心
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頼朝様に決められた許嫁。
彼の弟だという九郎義経様は、実直な青年になった。
もともと幼い頃からまっすぐな方だったから、余計に兄上の役に立つのだと頑張っておられた。
武勲もたくさん立てられて、そろそろ夫婦になるのかもしれない、と心密かに待ち望んでいる。
――――お慕いしています。
「京邸に私もご一緒してよろしいですか?」
「ああ。かまわんが…遊びに行くわけではないぞ」
すげなく返された言葉に私が少し肩を落とすと、柔らかな笑い声が聞こえた。
「ふふ。危険かもしれないから気をつけろと言えばいいじゃないですか、九郎」
「弁慶!」
「弁慶さま」
「お久しぶりです、名無しさん姫」
「お元気そうで、なによりですわ」
ふわりと微笑むと、九郎様が憮然とした表情で足音荒く歩き出した。
「行くぞ!」
「は、はいっ」
「おやおや・・・・・・」