遙か夢参

□不安を抱きしめて
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この世界にトリップしてきて、怨霊に襲われかけた私を助けて仲間に入れてくれたのは龍馬さんだった。
もともと好きだったけど、余計に好きになって。




想いを告げたら応えてくれて。




――――思い出の少女ではなく、ゆきちゃんではなく、私を選んでくれたんだと喜んでいたのに。



前と態度は変わらない。


いつだって龍馬さんは龍馬さんで。


お嬢はお嬢で。



龍馬さんが好き。



ゆきちゃんも好き。



だから。


もし、龍馬さんがゆきちゃんのことをやっぱり好きなのなら。





――――私は身を引かなくちゃいけないんだろう。



























「お前と話してると面白いな」



そう言ってくしゃくしゃと髪を撫でまわされて、私は自分が暗くなるのを感じた。



―――昨日、まったく同じことをゆきちゃんにしてたでしょう?



「名無しさん?」



「・・・・・・ずっと、ずっとね、聞きたいことがあったの」



「聞きたいこと? なんだ?」



「・・・・・・龍馬さんは、本当はゆきちゃんのことが好きなんじゃないの?」















「・・・・・・どういう意味だ?」










私の問いかけに、龍馬さんは表情を失くした。






「・・・・・・言葉のまま。もし、そうなら・・・・・・私はもう・・・・・・」











「もう、なんだ!?」






ぐいっと腕を引かれて押し殺した低い声で怒鳴られる。






びくりと肩を揺らすと凶悪な顔をした龍馬さんが顔を歪ませて私の唇に食らいついた。








「……んっ!」



キスをしたまま畳の上に押し倒されて、貪るように口づけられた。







「んぅ、ん、ふ……っ!」





くちゅくちゅと舌が絡まって濡れた音を立てる。

それが恥ずかしくてたまらなくて逃げようとするけど逃がしてはもらえなかった。








「は、んむ……っ」





キスが気持ちよくて腰が震える。

さらに酸欠でクラクラしてきてぎゅっと龍馬さんの服を握ると、やっと唇を離して、顔中に口づけられた。







「ん、んっ」





「・・・・・・俺は、お嬢にこんなことはしない。名無しさんだからだ」





憮然とした表情でそう言われて、私はまなじりに涙をにじませた。







「だ、って……龍馬さ、態度同じ……っ」





「あー、それは悪かった。もっとお前を優先してりゃよかったんだが……照れくさくてな。以後気を付けます」




心底反省したように眉を下げてそう言われ、私はその首にぎゅっと抱き着いた。









「ばか…っ、不安、だったんだから……っ」









「・・・・・・お前さんの方が馬鹿だ」







「え?」






重いため息とともに太腿に押し付けられた熱いものに最初きょとんとして、そして一気に顔が熱を孕んだ。







「この態勢でんなかわいいことすんなって……っ!」








片腕を畳についてうなだれる龍馬さんにおろおろしていると、龍馬さんが「よし」と何かを決意した。








「りょ、龍馬さん?」







「・・・・・・たっぷり愛してやるから、覚悟しろよ?」







ちゅ、と額のリップ音とともに言われた言葉に私はさらに顔を赤くした。










(お前だから)


2012/9/10
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