遙か夢参

□不安を抱きしめて
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一緒に簪を見に行って茶屋に行こう、と計画していたそのときにゆきちゃんがぱたぱたと降りてきた。



「龍馬さん、一緒に出掛けませんか?」



「お、いいぞ! 名無しさんも一緒だがいいか?」



「え…」


「あ、もしかして出かける予定があったんですか?」



「ああ、まぁな。にしても、お嬢はどこに用事があるんだ?」



「高杉さんに会いたくて。龍馬さんも一緒に行っていただけたら、と思ったんですけど…」



困った様子でゆきちゃんが私を見た。

用事があるならそっちを優先させた方がいいな、と思って私が今度にするといいかけたその時。




「んじゃあ、高杉のところに一緒に行くか!」



にか、と笑った龍馬さんに私は言葉を詰まらせて慌てて笑みを作った。




「行ってきなよ、ゆきちゃん」



「え、でも…」



「私は高杉さんが怖いからお留守番。私のお出かけは簪を見る程度だったから今度でもいいし」



「あ? なんだ、名無しさんは行かないのか?」


きょとんとした顔で龍馬さんに言われて、じくじくと痛む胸の痛みを押し隠す。




「うん。行ってらっしゃい」




























ため息を押し隠して部屋に戻ると、都が怪訝な顔をして私を見た。



「なんだ。行かなかったのか?」



「うーん、まぁ」




「・・・・・・もしかして坂本の奴、ゆきと出かけたわけじゃ?」



「私が行ってらっしゃいって言ったから」



「あのバカ……っ!」



私のかわりに怒ってくれる都にくすりと笑う。




「でもお前、こないだからそんなんばっかだろ!? 坂本、恋人まちがってんじゃないのか!?」




憤慨する都の言葉に、ちくりと胸が痛んだ。




――――そう。


付き合い始めたというのに、龍馬さんの態度は何も変わらない。


ゆきちゃんに対しても、私に対しても。
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