遙か夢参
□後ろ向きな天然
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小松さんの屋敷に着くと、小松さんはまっすぐ自分の部屋に入って行った。
手を引かれるままついていくと、眉間にしわを寄せて怒った様子の小松さんが腕を組んで私を見下ろした。
「君、これから一人で外出するの禁止だから」
「え?」
―――そんなに、迷惑をかけてる?
一人そう考えて落ち込んでいると、くいっとあごをつかまれた。
「君って自分がキレイだって自覚ないでしょ。桐生くんももっとしっかり育ててほしいものだね」
「き、れい・・・・・・私が?」
言われなれない言葉に驚くと、小松さんの眉間のしわが深くなった。
「綺麗すぎて話しかけるのを躊躇するくらいなんだけど、さっきみたいに無謀な輩もいるしね。用心を重ねるに越したことはない」
「・・・・・・からかってますか?」
「ほら信用しない。だから心配なんだ」
はぁ、とため息をついて小松さんは私を腕の中に閉じ込めた。
「あ、あの!?」
逃げたりしないんだけど、と思いながら小松さんを見上げると彼は少し困った顔で私を見下ろしていた。
「・・・・・・頼むから、私の心労をこれ以上増やさないでくれる?」
「それってどういう意・・・・・・」
「黙って」
言葉を塞ぐように唇が重なった。
(愛情が伝わるまであと一歩)
2012/9/10