遙か夢参

□後ろ向きな天然
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「・・・・・・私もうずっとあっちの世界にいたい、瞬」



「馬鹿なこと言ってないで小松さんのところに行って来い」



「瞬、私のこと嫌いなの…?」


「はぁ…」

























双子の兄である瞬の言いつけで小松さんのところに行くことになってしまった。



―――なんで私が。


そう思う自分と。


―――小松さんに会える。



そう喜ぶ自分がいて、我ながら扱いに困るなと自己分析してみる。



歩いているとちらちら振り返られて余計に身が縮まった。



―――そんなに変かな、私。



そんな風に思っていると、突然前を塞がれた。



戸惑って顔を上げると二人の青年。


「あの……?」




「あ、あの、暇ですか?」


「お茶でもどうですか!?」


緊張しているのか頬を赤らめてそう直立不動したその二人に、私は首を傾げた。



「私、お金持ってないですよ?」


「お、おごりますっ」



「お、お綺麗ですねっ」



「?」


「馬鹿っ」



一人が一人を小突いて、小突かれた方は頭を抱えた。



―――コント?



人さらいか何かだろうか、と困惑していると、背後からふわりと肩を抱かれた。



「――――失礼。私の連れが、何か?」



「こ、まつさ・・・・・・」



「げ・・・・・・小松様!?」


「誰だよ……いてっ」



「馬鹿、薩摩の家老、小松様だよ!」


「げ!?」



―――やっぱりコント?




「・・・・・・わかったなら早く消えてくれるかな」



不愉快そうにそう言い放った小松さんに、その二人は蜘蛛の子を散らすようにぱっと逃げていった。



「・・・・・・生コント見ちゃった」



「君、バカなの?」


「え」



呆れた顔で見下ろされて、私は首を傾げた。



―――怒ってる?



「怒ってますか?」



「怒ってないとでも?」


「・・・・・・ごめんなさい」




「君って、しっかりしてそうでゆきくんよりもずっと危なっかしくて放っておけないよね」


はぁ、とため息をつかれて戸惑っていると小松さんに手を引かれた。



「―――行くよ」



「え、と」



「それとも置いて行かれたい?」


「い、いえ!」


「じゃあ大人しくついておいでよ」




手を引かれるままに小松さんについていくと、やっぱりひそひそと噂される。


町娘たちが小松さんに熱い視線を送っているのを見て、なんだか悲しくなってしまった。



――――こんな思いをするくらいなら、ずっとあの砂の世界にいたいのに。
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