遙か夢参
□好意に振り回されて
1ページ/1ページ
「雪見たいなぁ」
春の風に頬を撫でられながら空を見上げてそう言うと、すっと腰を抱きかかえられた。
「え……え!?」
気づいたら周り一面雪景色で、白というよりは青みがかった雪絨毯に迎えられて寒さに肩を震わせた。
「さ、む……っ」
「あ……ごめんね…君が、雪を見たいと言ったから……」
「言った、けど…っ」
せめて防寒着を着てから連れてきてほしかった。
桜智さんは寒くないのかな、と思って見上げると涼しい顔で寒くも暑くもない顔をしてた。
ただ私のことを心配してるって分かる顔で。
「・・・・・・さむー! ごめん限界っ」
「え……!?」
寒すぎて桜智さんにばっと抱き着くと触れ合った場所から熱が生まれて、少しほっとした。
―――雪国さむ!
「あ、あの……っ!」
かぁぁぁぁぁっと顔を赤くした桜智さんを見上げて、「やっぱり季節どおりがいいね」と呟くとすぐに周りの景色がもとに戻った。
「…鬼の瞬間移動能力って便利だね」
「う、うん。あの、名無しさんちゃ・・・・・・離れて・・・・・・」
真っ赤な顔で身を引こうとする桜智さんから私はそっと身を離した。
(振り回されて)
(「今度から桜智さんの前で発言するときはちょっと考えてからにしよう」)
2012/9/10