遙か夢参
□見る目がなくて
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怨霊との戦闘を終えて、望美さんが封印するのを見守っていたその時、ふと名無しさんくんはどこだろうと視線を巡らした。
――いない?
後ろか、と振り向こうとした瞬間突き飛ばされた。
「・・・っ!」
新手か、と振り向くと。
「名無しさんくん!」
肩に怨霊の爪を食いこませ表情を歪ませた名無しさんくんがいた。
すぐに庇われたのだと合点する。
「はぁっ!」
長刀を振るって怨霊を倒すと、慌てて名無しさんくんに駆け寄った。
「うぅ……っ」
「ひどい傷だ……早く陣に戻りましょう!」
怪我をしていない方の腕を肩に担いでその細さと軽さに目を瞠った。
「・・・・・・あなたは、ちゃんと食べているんですか?」
思わず咎める声が漏れて、それに荒い息が返される。
「す、みませ……っ」
「・・・・・・少し我慢してください」
そう言って怪我の部分に触らないようにしてその体を横抱きにした。
「!」
その抱き上げた感触に、心の中で唸る。
―――柔らかい。
まさか。
この子は。
すぐに判明することだ、と一つ頭を振って雑念を飛ばすと陣へと急いだ。