遙か夢参

□見る目がなくて
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黒い袈裟に覆われた広い背中に、胸がときめく。


たとえ私を見る目がひどく冷たかったとしても。




「あ、望美。見てこれ」


「あ、かわいー! ほんとに見つけるの上手だね、名無しさんって!」


「そうかな? ほら、すごく似合うよ」



手に取った耳飾りを望美の耳元につけてあげると、少し頬を染めて望美が笑顔になってくれる。
その手に鏡を持たせてあげると、すごく嬉しそうな顔をした。




「目ざといことですね」


購入しに行った望美の背中を眺めていると、後ろから声がした。

振り向くと不機嫌な弁慶さん。



「そう、ですか? 望美に似合うと思ったから」



「彼女は九郎と恋仲ですよ。波風を立てないでくれますか、厄介なので」



「・・・・・・ごめん。でも、そんなつもりはないから。兄貴分のつもりだし」



にこりと笑うと、ふんと鼻をならされた。


「あなたたちにそんな気がなくとも、そう見えるという話をしているんです。考えればわかることでしょう」


「・・・・・・うん。ごめん」



「あー、弁慶、大丈夫だって! 九郎もそんなに心狭くないしさっ」


慌ててとりなそうとしてくれる景時さんにも頭を下げる。


「いいんです。考え、足りなかったから」


――――嫌われているんだろうと思う。


身長が高くて中性的な顔立ちをした自分を、初めて見て女だと看破できる人はいない。
みんなもそうだった。

それでいい、と思っていたのに。



―――好きに、なってしまった。



好きで、好きで。



でも彼には嫌われている。


これで女だとわかって同じ態度をされたら、悲しくて心が壊れてしまいそうだ。


だから女だと知られたくはない。
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