遙か夢参
□へたれわんこ
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叶うことないって思ってたから、好きだと言ってくれた時にすごく嬉しくて幸せになった。
ゆきちゃんよりも私を選んでくれたって。
これ以上悩むことはない、幸せだって。
でも。
「桜智さん、名無しさんちゃん、行こう」
「うん」
「ああ」
ゆきちゃんに呼ばれて桜智さんをちらりと見る。
すると目が合って、でもすぐにぱっと視線を逸らされる。
その頬が赤いから照れたんだろうなと思ったんだけど。一人先先歩いて行ってゆきちゃんの隣に並ばれると、そりゃいい気はしなくって。
「・・・・・・」
こういう時って、手くらい引いてくれてもいいんじゃないの?とか。
そういうことを思ったらきりがなくて。
「っ」
ゆきちゃんに笑いかけた、崩れそうなほどにとろけた桜智さんの表情に胸がぎゅっとなる。
なんで、そんな顔するかな。
桜智さんの恋人は、私でしょ?
胸の中のもやもやいらいらをどうすることもできなくて、私は隣に立つ龍馬さんの肩をがしりと殴って気持ちを落ち着けた。
―――桜智さんの、へたれ……っ!