遙か夢参

□へたれわんこ
1ページ/2ページ











叶うことないって思ってたから、好きだと言ってくれた時にすごく嬉しくて幸せになった。
ゆきちゃんよりも私を選んでくれたって。

これ以上悩むことはない、幸せだって。

でも。


「桜智さん、名無しさんちゃん、行こう」




「うん」




「ああ」

ゆきちゃんに呼ばれて桜智さんをちらりと見る。
すると目が合って、でもすぐにぱっと視線を逸らされる。
その頬が赤いから照れたんだろうなと思ったんだけど。一人先先歩いて行ってゆきちゃんの隣に並ばれると、そりゃいい気はしなくって。



「・・・・・・」


こういう時って、手くらい引いてくれてもいいんじゃないの?とか。

そういうことを思ったらきりがなくて。


「っ」



ゆきちゃんに笑いかけた、崩れそうなほどにとろけた桜智さんの表情に胸がぎゅっとなる。






なんで、そんな顔するかな。





桜智さんの恋人は、私でしょ?





胸の中のもやもやいらいらをどうすることもできなくて、私は隣に立つ龍馬さんの肩をがしりと殴って気持ちを落ち着けた。



―――桜智さんの、へたれ……っ!
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ