乙女ゲーム夢3

□貴方を欲し、貴方を選ぶ
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【2】


 玄関が開く音がして、私は笑顔で振り向いた。


「おかえりなさい、原田さん」


「おう、今帰った」


 
「……なんだ、あれだな。夫婦みたいなやりとりで照れるな」


「!」















 一緒に住み始めて三日。




 彼は思った以上に優しかった。





 日中彼が何をしているのかは教えてもらっていない。私だって知らない方がいいんだろうと思って何も聞かない。でも彼は毎日同じ時間に家に帰って来てくれる。……最初は信用できないからなんだろうなって思ってたんだけど、心配してくれてるんだろうって思えるだけの余裕が少しずつでてきた。






 だって私、自分の着物の着付けすらできなかったし。料理は普段からしてたからまだなんとかなったけど、それでも最初は火を起こすことから始めないといけなかったから原田さんに大分迷惑をかけてしまった。





 でも、知らない土地、知らない時代に暮らしているのにしてはけっこううまくやっているんじゃないかと思ってみたり。これで稼ぎがあったら完ぺきなんじゃないかな? まあ……それはさすがに難しいんだけども。







「今日も美味かったよ。お前、いい嫁さんになれるぜ?」




「ありがとうございます」 





 こうやってさらりとほめられるから彼は女性にモテるんだろうな。はは、流石エロテロリスト原田……。




 この人と一緒にいた千鶴ちゃんってすごいなんていうか……煽情的なんだよねー……。





 女は男で化けるっていうもんね。すごいよ、原田さん! ……ってまだ千鶴ちゃんと出会ってもないんだけど。







「ん? どうした?」





 一部の隙もない笑顔を向けられて私は思わず愛想笑いを返す。



 落ちつけ私。惑わされるな。惚れたら負け、この人そんな気ぜんぜんないから。





 これ、罠、絶対。





 なんの罠だよって感じなんだけど、無意識にやってるからこそ性質が悪い感じの、天然エロなんだよ。この人。





 ……でも。




 この時代でこれだけ落ち着いて生活出来てるのはやっぱり原田さんのおかげ……なんだよなあ。




 きっとこの人がいなかったら生活上も精神上ももっともっと不安定だった……。




 有難いなぁ。




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