乙女ゲーム夢3

□優しい人たち
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「馬鹿は喋るな!」


「うるさい黙れ!」


「わめくな!」


「泣くなやかましい!」


「お前の声がカンに触るんだよ!」




何度となく繰り返された罵詈雑言は、私から「声」を奪った。







「あー、君は話せないんだったね?」


新選組の局長が、優しく頬を和ませて笑いかけてくれた。

それに一つこくりと頷いて肯定する。



―――この人斬り集団と言われている団体に、私は奉公に出された。


いや、きっと売られたと言った方が正しい。
新選組にその気はなくても、両親はもう私が帰ってこないことを前提としている。


粗相をして殺されてくれれば厄介払いができる、と。


「・・・・・・文字は書けるかい?」


首を横に振って否定する。


「話している意味はわかるね?」


こくりと頷いて肯定する。


今私に出来る意思表示はそれだけだった。


厄介な、と今すぐ追い出されてもおかしくない。
それなのに、近藤さんはからりと破顔した。


「なら、問題ない。最初のうちは少し意思疎通がしにくいかもしれんが、なに。そのうち慣れるさ」



「―――」



含みなく笑う近藤さんに、私はしばし瞠目した。

まさかそんな風に言われるだなんて。



「よろしく頼むよ、名無しさんくん」



微笑みかけられて、私は慌てて畳に指をついて深々と頭を下げた。



そんな優しい目で見られたのは初めてだった。
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