乙女ゲーム夢3
□時間をかけて
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あれから彼女は少しずつ変わった。
まず、毎日ご飯を食べるようになった。
僕をはじめ人と少なくとも会話をするようになった。
そして、時折笑うようになった。
「何かしたいって?」
彼女に言われてことりと首を傾げたら、名無しさんはじっと僕を見上げてきた。
「何もしないの、おかしいから・・・」
それだけ言って照れたように視線を逸らす。
―――かわいいなぁ。
磨けば磨くほど魅力を増す彼女に、僕は最近やられてばかりだ。
甘味屋に連れて行くと目を輝かせるし、意外と表情を読みやすい。
―――殻が破れたからだろうけど。
「じゃあ、賄い係とかどう? 土方さんに口添えしてあげるよ」
にこ、と笑いかけるとほっとした顔をして名無しさんはこっくりと頷いた。