乙女ゲーム夢3
□求めてくれるのなら
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決して完全な一方通行の想いではないと思っていたのに、時折思い知らされる、私たちの間の見えない壁。
「・・・・・・知っていたの?」
「お嬢様?」
「このパーティが、私とお姉様の婚約者を決めるためのパーティだと、知っていたの? 藤田……っ」
知らなかったと言って。
そうなんですかと聞いて。
そんな願いを込めて尋ねた私に返されたのは、沈痛な藤田の表情だった。
「・・・・・・」
「知って、たの・・・・・・」
その事実が私にもたらしたのは絶望だった。
どん、と藤田の胸を叩く。
大きな藤田はそれではゆるがない。
ただ困ったような顔をするだけで。
逞しい藤田の体を、私を守ってくれるものだと思って好ましく思っていたのに、今は苛々するほどに腹立たしい。
「……っ! バカ! 藤田のバカ! 私は・・・・・・藤田が好きなのに……っ!」
はっと藤田の表情が驚いたものにかわった。
その顔を見上げて、泣くまいと自分を律しながら、それでも泣きそうになってその胸に縋り付いた。
「・・・・・・着飾るのは藤田のためだけでいいのに……どうして他の男のために着飾らないといけないのよ……っ」
「・・・・・・お嬢様は、私のことがお好きなのですか……?」
震える声に尋ねられて、どれほど鈍い男なんだとイラつきながら私は藤田を睨みあげた。
「だからっ! そうだって言ってるわ! んっ?」
言い終わったと同時に。藤田の薄い唇が私に重なった。
触れるだけじゃなくて、もっと深く、重なり合う・・・・・・接吻。
その唇が離れると、ぎゅっと藤田が私を抱きしめた。
「・・・・・・私も、お嬢様のことが好きです。ですが、日々美しく花開いていく貴方が大切で・・・・・・いつか、離れていくのだろうと・・・・・・そう思うと苦しくて・・・・・・怖くて・・・・・・」
「・・・・・・行かないわ。藤田が私を好きだと言ってくれるなら、どこにも行かない。私は藤田のものだから……」
「……っ!」
――愛しています、お嬢様・・・・・・。
言葉と共に、再び唇が重なった。
2012/9/20