乙女ゲーム夢3
□冷たい顔と優しい手
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なんで、僕はこう素直に優しくできないかな……っ!
自分で自分にイラつきながら廊下を歩いていると、遠くで名無しさんと土方さんが仲良さそうに話しているのが見えた。
僕に向けるような、うかがうような表情じゃなくて純粋に楽しそうに名無しさんが笑う。
それを受けて土方さんも笑って、くしゃりと彼女の髪を・・・・・・。
「・・・・・・むかつく」
―――触らないでよ。
あの二人、なんであんなに仲がいいんだろう。
二人を見ているだけで苛々して、僕はくるりと踵を返した。
そこに。
「あ、沖田さん。さっき斎藤さんが探してましたよ」
「千鶴ちゃん」
男装姿でお茶を盆にのせた彼女を見て、僕はくすりと笑った。
「さっきっていつ? 四半刻前? それとももっと?」
「え、えーと・・・・・・」
真剣に悩みだした千鶴ちゃんをにやにや笑いながら見る。
「そんなに考えなくちゃいけないこと? 君ってさっきがいつかもわからないの? どうしてかな、頭悪いのかな?」
「む、そんな風にいわれるいわれがありませんっ」
「怒ってるけど思い出せないんでしょ?」
怒る千鶴ちゃんをからかって八つ当たりして自分の苛々を解消させて満足すると、僕は巡察の準備に回った。