乙女ゲーム夢3
□崩れた表情を見たくて
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「名無しさん、今日もかわいいね」
「あーうん。ありがとー」
いつ構いに行っても君は動じない。
「ねー、君何したら驚いたり恥ずかしがったりするわけ? 面白くないんだけど」
「お生憎ですが、私は仕事をするためにここにいるわけで、あなたを楽しませるためにここにいるわけじゃありません」
素直に聞いてみたのに淡々と返されて、僕はむぅっと眉間にしわを寄せた。
「なんでかな。僕、けっこう君のこと気に入ってるんだけど」
「ありがとうございますって言ってるじゃないですか」
「それってあしらってるだけでしょ?」
「もちろんです」
「・・・・・・むぅ」
「さ、早く仕事に戻ってくださいな。私の仕事もはかどりません」
「わかった。また後でね」
ひらひら手を振って去って行く沖田さんの後ろ姿にため息を一つ。
―――嫌いなわけじゃないんだけどなぁ。
あしらう方が心臓に優しいだけで。
真剣にこくはくしてくれるならまた違うだろうに、と自惚れに近いことを考えて私は小さく頭を振った。
「仕事しよ…」