乙女ゲーム夢3

□もやもやして
1ページ/1ページ



「ねぇ、セシル。今日なんだけど…」


「ごめんなさい、マイプリンセス。今日ははるかとレッスンの約束をしてるんです」


申し訳なさそうな顔で謝られて、私はぐっと唇をかみしめた。




「・・・・・・わかった」





―――セシルの恋人は、私のはずなのに。



セシルは音楽のミューズを常に優先する。




























「・・・・・・あーあ、つまんない」



セシルの歌は好き。



心地よくて、胸に沁みこむような、そんな歌だから。


ずっと歌っててほしい。セシルがそう望むなら。




「でも、はるちゃんとばっかり一緒にいるのは、ずるいよ……」



ぽろりと涙が頬を滑った。

かと思えば小さな舌がそれをくいっと拭い上げた。



「!」




はっとして横を見ると、黒猫が私をじっと見つめ・・・・・・その姿を大きくした。



「どうして、泣いている? 何か嫌なことがあった?」



心配そうな目で見つめられて、私はぐいっとセシルの体を押し返した。



「名無しさん?」



「嫌い。嫌い、セシルなんて……っ」





「どうして? 私は、名無しさんが好きです」




「私よりはるちゃんと一緒にいる方が楽しいんでしょ!?」



涙交じりにそう叫ぶと、セシルは少し困った顔をして・・・・・・それからてのひらを開いて私に差し出した。



「はるかに、これの作り方を教えてもらっていたんです」




「!」




差し出された手にあったのは、ビーズ細工のブレスレット。




「名無しさんに似合う色を選んで、作っていました。不安にさせて、ごめんなさい」



ぎゅっと抱きしめられて、私はその体に縋り付いた。



(謝罪と抱擁と)






















――――



「嫌いって言って、ごめん、セシル……っ!」



「…許しません。傷つきました」



「!」


ぎくりと体を震わせた私の背中をそっとなでて、セシルは私の唇に噛みついた。



「んぅ、んっ、あふ……っ」



口内を蹂躙されて酸素不足でクラクラする。



「は・・・・・・私が満足するまでキスさせてくれたら、許してあげます」



悪戯めいた瞳で微笑まれて、私はふわりと微笑んだ。



2012/9/10

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ