乙女ゲーム夢3
□魅入られて
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「ったく、なんで俺が・・・・・・」
町に出るなら団子を土産に買ってきてくれ、と新八たちにねだられた。
普段なら断るものを、運悪く近藤さんが居あわせて「頼んだぞ、歳」なんて言われたら断われねぇ。
「おい、団子をくれ」
「はい、おいくつ?」
「・・・・・・30本ほど」
「かしこまりました。そちらにかけてお待ちください」
茶屋の中には数人しか客がいない。
店先の席に座って待っていると、隣にことりとお茶と茶菓子が置かれた。
「! ……頼んでないが?」
眉間にしわを寄せてそちらを見やると、二十歳前後の娘がにこりと微笑んだ。
「お侍さま、今糖分が必要だと思うのでおまけです。どうぞいただいてください」
「・・・・・・甘いものは好きじゃない」
「甘さ控えめのものなので大丈夫なはずです。甘いものは苦手かな、と思ってお茶は渋めに入れましたから。あ、もしおまけっていうのが気になるなら、今度来た時に感想教えてください」
「・・・・・・」
打って響くような答えにしばし黙り込むと、娘はすっと立ち上がって店の奥へと踵を返した。
「おい」
「――…眉間のしわ。それ食べて取ってください。お疲れみたいだし、たまには休憩も必要ですよ?」
くす、と人を食ったような笑みを浮かべて去って行ったその娘の後ろ姿を戸惑いながら見つめ、俺はそのお茶と茶菓子に大人しく手を出した。
「・・・・・・うまい」
甘さ控えめで食べやすい。
お茶もたしかに渋めで口直しできる。
「・・・・・・よく人のことを見てやがる」
くす、と笑って視線を奥の方へやる。
売り子の娘たちの熱い視線に出会ったが、その中にさっきの娘はいなかった。