乙女ゲーム夢3

□自業自得といえど
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私の中の神宮寺レンの認識は。






「女ならだれでも口説く男」で「どんな女にも平等に接する男」で「甘い言葉は社交辞令」。








だから出会った時に「俺のミューズ」と言って手を握られてもちっとも心動かなかった。





















「おはよう、レディ。今日も美しいね」


教室に入ってきた彼女にすかさず近寄って微笑む駆けるとあからさまに嫌そうな顔が返ってきて少し凹んだ。



「…おはよ」


短く返して席に座る彼女の隣の席を拝借して座り込む。

最初のころは「そこ、あんたの席じゃないでしょ」なんて言われてたけど最近はそんなことも言わなくなった。

たぶん、言っても無駄だと諦めたんだろうけど。



「ねぇ、オレと付き合ってほしいんだ。真剣に。初めて見たときから君しかいないと思ってる」


周りから黄色い悲鳴が上がるけどそっとしておく。

それよりも大切なのは目の前の彼女だから。


何度となく言ってきた愛の告白に、いつも彼女は「ああ、はいはい」と一言で済ませるんだけど。


今日はちがった。



「はー・・・・・・」


表情を変えず、ため息を吐き出すと彼女がじっとオレの顔を見つめた。



―――綺麗だ。


思わず見とれていたオレの耳に、彼女の軽やかな声が聞こえた。



「そろそろ、その社交辞令をやめたらどう? 神宮寺」



何秒か遅れて頭の中に入り込んできた言葉に、オレはどきりとした。



「しゃこう、じれい・・・・・・?」



「女を見たらすぐに口説くのは、やめた方がいい。中身なく口説かれるのは、こちらとしても不愉快だ」



ぱしりと頬をはたかれたみたいだった。





目の前で表情を凍らせた神宮寺に、言った自分の方がどきりとした。




傷つけた?


いやまさか。


でも、この顔は。




見つめたまま無表情に戸惑っていると、神宮寺がふらりと立ち上がった。


「じ・・・・・・」


「…ごめん。少し、考える、から」



そんな捨てられた子供みたいな顔をして、どこに行く。


かけそうになった言葉を飲み下して、私はふらふらと教室を出ていった彼の背中を見送った。


―――何となく背中が寂しげだ。



「あーあ、落ち込んだじゃねぇか」



「翔」


とん、と机に腰掛ける翔に視線をやると、彼はにっと笑った。


「あいつにはいい薬かもしれないけどさ、知ってたか?」



―――あいつ、お前に会ってからは自分から女に近づいてないし、誘いも全部断ってるんだぜ。



「・・・・・・だから?」



どきんどきんと胸が鳴る。






それが、本当なら。






私は彼の真剣な気持ちを踏みにじったことになる。







「だからさ、噂話の作る神宮寺レン像じゃなくて、等身大の目の前にいる神宮寺レンを見てやれよ」
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