乙女ゲーム夢3

□それならば
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ゲームのエンディングを見た直後だった。


気づけば私は0歳児の赤子で、隣を見ても赤子がいた。

意味が分からなくて、大きくなるにつれて自分が転生したのだと悟った。


しかも、百合子の双子の姉として。



一緒に生まれ落ちたはずなのに、やっぱりどこか違う双子の妹。

愛される彼女と愛されない自分。


同じ顔をしているのに。









「やぁ、今日も綺麗な不機嫌面だな」


不敵に笑われて私はすっと視線を逸らした。


「あなたも相変わらずね、斯波さん」



「相変わらず男前だろう?」


に、と笑うその顔にときめいた心にふたをする。


―――ダメよ。


だって彼はいずれ百合子を追いかけはじめるんだから。



「…なぁ」



「!」



思考に落ちている間に距離をつめられて、腰に手を当てられる。
そのままくっと引き寄せられて斯波さんを見上げると、彼の瞳は熱を帯びていた。



「まだダメなのか? あなたはいつになったら俺を受け入れてくれるんだ…?」


切なげに掠れた声に、胸がざわりとうごめく。



あなたを受け入れることが出来るのが、私であればよかった。


「!」



「バカ言わないで。受け入れる気はないって言ってるじゃないの」



ぐっと彼の体を押し戻す。



「手厳しいな」


少し傷ついたように苦笑されて、それに胸が痛む。



「俺はあなたを諦めないぜ。名無しさんさん」


すっと髪を一房持ち上げられて、その先に口づける。
その向こうから目を見つめられて、甘い痛みに胸が疼いた。












―――そろそろなのよ。原作が始まるのは。


だから何がなんでも、あなたを受け入れるわけにはいかないの。
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