乙女ゲーム夢3

□かっこかわいい独占欲
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さりげなくホッチキス係を音也がやってくれて、気づけば1時間くらいで全て終わった。


「あー終わったぁ!」


「日向先生、この量一人でとか鬼ー!」



「終わってよかったねー」


「今日名無しさんがいてくれてまじでよかったぁ! ありがとな」


にっこーと笑いかけられて私も笑い返す。


「んーん、困ったときはお互い様だしね」


「・・・・・・お疲れ様、二人とも」


「え? あ、りんちゃん!」


教室の入り口に林檎ちゃんが立っていた。


―――あれ?


笑顔なのに笑顔なはずなのにどことない違和感に私の頬が引きつる。



「音くん、龍也がそのプリント職員室に持ってきたらそのまま帰っていいって言ってたわよ」


「ほんと? じゃあ帰ろっか」


笑顔のまま振り向かれた私は音也の笑顔よりもその背後の林檎ちゃんの無表情の方に意識が言っていた。


「駄目よ、音くん」

「え?」


「名無しさんちゃんとね、少し進路の話があるから」


「そうなの? じゃあオレ先に帰るね!」


空気を読もうと音也がぱっと立ち上がった。


違う! 今はその空気呼んじゃダメ!



「ほんとありがと、名無しさん! また明日ねっ」


ぶんぶんと手を振って教室を出ていく音也を思わず追いかけそうになった。






―――ここに置いて行かないで……っ!








半泣きで追いすがりそうになった、ただそれだけなのに。



がん!



「・・・・・・」







「なんで、追いかけるの?」








ちろり、と斜め上から見下ろされる。







目の前には見事な脚線美。







私の進路を塞ぐべく壁に押し付けられた足に、私はさぁっと血の気が引くのを感じた。



―――怒ってらっしゃる。







「ねぇ、なんで抱きしめられるの、簡単に」







する、と頬を撫でられてぴくりと肩が震える。


「りん、ご、ちゃ……」


「名無しさんが優しいのは知ってるよ。だからデートを不意にされたことに怒ってるんじゃない」



足が降ろされて、真正面から見下ろされる。

見上げた表情が悔しそう。












「・・・・・・俺の彼女なのに、音也に簡単に抱かれるな、馬鹿」








華奢に見せかけて男らしい腕にぎゅうっと抱きしめられて、胸が幸せでいっぱいになった。



(甘い独占欲)


2012/8/30
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