乙女ゲーム夢3

□彼岸花
1ページ/6ページ








一番最初の記憶は赤だ。



真っ赤な色。



気づけば骸の中に一人だけたたずみ荒い息をついていた。


それが記憶のはじまり。



























「お、名無しさんじゃねぇか」


「原田さん! 巡察お疲れさまです」


「おう」


ちょうど買い物が終わって屯所に帰ろうとしたところに巡察中のみんなと鉢合わせた。


「もう買い物は終わったのか?」


「はい。これから屯所に戻るところです」


「そうか。俺たちも、ちょうど屯所に帰るとこだったんだ」


原田さんがそう言ってさりげなく私の手から買い物かごを取り上げてくれた。


「あ、いいですよ! 今日そんなに量買ってないですし!」



「ん? ああ、気にすんな」



に、と笑って原田さんは何も持っていない方の手で私の頭をぐしゃぐしゃとかきまわした。



「! くちゃくちゃになっちゃいます…」



「はは! 大丈夫だよ、それでもお前かわいいから」



「……っ!」



「ほら、帰るぞ」



うながされて原田さんやみんなと一緒に歩き出す。


―――原田さんはずるい。


決して軟派なわけじゃなく、かわいいとか自然に口にするから。

女性扱いされているとわかる優しさをくれるから。


どんどん、どんどん好きになってしまう。




――――私にはこんな想いを抱く資格はないのに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ