うたプリlong夢

□造花2
2ページ/3ページ








「はー・・・・・・」



もうすでにウィッグと化した髪を外して短い髪のまま彼女の住所のマンションの下で帰りを待つ。
部屋番号の場所にはまだ灯りはついてない。

一歩間違えたらストーカーだな、と苦く思いながら俺は暗い道を眺めた。


わかるかな。

君が通ったら俺はわかるかな?

きっとわかると思う。

きっと綺麗になったと思う。

君は今の俺をどう思う?

アイドルとしての「月宮林檎」を。


目の前の男の「月宮林檎」を。



どう、思うだろう?



寒さで痛む頬をマフラーにうずめる。すると、遠くから微かな話し声が聞こえてきた。




「・・・・・・ね、こんな・・・・・・くに」


「・・・・・・いよ、俺が送りたかった・・・・・・し」



「あり・・・・・・うれし・・・・・・」



なんだカップルか、と上げた視線を落とそうとした俺はそのまま固まることになった。


――――名無しさん?



学生時代よりも長くなった髪。

幼さを脱し大人の色香を纏った年相応の姿。


綺麗になった、と心の奥で呟いて・・・・・・その男は誰だ、と強い嫉妬が頭をもたげた。





彼女が手を振って男と別れた姿に心の中でほっとする。



彼氏じゃないのか。



いやでも今日は帰っただけなのかもしれない。




そう思えば嫉妬の炎は消えることを知らず。





俺の目の前を通り過ぎようとした彼女の腕をがっと掴んだ。




「きゃ・・・っ」





びく、と覚えた様子を見せた彼女に視線を合わせ、マフラーを引き下げる。





「・・・・・・久し振り。元気だった?」




「・・・・・・林檎くん?」




驚く彼女ににこ、と笑いかける。





「来ちゃった」




「き、来ちゃったじゃないでしょ・・・・・・ファンに見つかったら騒ぎになるよ?」




おろおろしながら俺の心配をしてくれる名無しさんにいつもと変わらないな、と思って・・・・・・なんだか嬉しくなった。

もう何年も会ってなかったのに、普通に話してる。
それがとてもとても自然で嬉しい。

年月なんて感じさせないあたりがとても。



ただ・・・・・・今の俺たちの関係は、恋人同士でもないのにどうしてだろう。


腹が立って・・・・・・仕方がない。


君が他の男と一緒にいるのが嫌で仕方がない。
何年も経ってるんだ。
彼氏がいたって仕方がない。他に男がいたって仕方がない。
結婚していたっておかしくない。


むしろいることを祈ってたはずだ。


けど。






けど!





「じゃあさ、部屋にいれて。少し話があるんだ」




あくまで甘えるように。

昔を思い出させるように。

俺に甘えられると弱かった君だから。そんな君の弱みに付け込むように。



ほんのりと頬を赤くした彼女にもうひと押し、と上目遣いに見て小首を傾げる。




「お願い」




「し、仕方ないなぁ・・・・・・」




困ったようにうなづいた彼女に微笑みかける。



「ありがとう!」


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ