うたプリlong夢

□あなたのために
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鼻がむずむずして喉が痛い。



あー風邪引いちゃったんだろうなと思って、私はそれでも楽譜に向かった。



寝たら治るだろうし、あーでも風邪薬くらいは飲んだ方がいいかなぁ。でもいつも気合で治すしな。






なんてことをつらつら考えながらスコアを書き込んでいると、防音室の扉がコンコンとノックされた。


顔を上げるとレンくんがドアを開けたところで、「やぁ、熱心だね」と言いながら部屋に入ってきた。




「お疲れ様、レンくん」


にこ、と笑って見上げるとレンくんは微笑みかけて、少し怪訝な顔をした。




「・・・・・・名無しさん? 声、おかしくないか?」





「そう? そんなことないと思うけど」



そう返しながらも鼻をずるずるしていたものだから、レンくんの眉間にすぐにしわが寄った。




「風邪を引いたんだね?」




「んー、かなぁ?」



生返事を返しながらスコアに視線を移したらぱっとそれを取り上げられてしまった。


「あ、ちょっと!」



「ちょっと、じゃないよ」



「え…」



きつい声の調子に驚いて顔を上げると、レンくんがむっと怒った顔で私を見下ろしていた。




「レンくん?」



不思議に思って首を傾げたら、レンくんが私の額にすっと手を当てた。
そのまま続けて首も触られて、レンくんの温かみを心地よく感じていた。



「ん・・・・・・少し熱いかな」



「そうかな?」




自分では熱があるとは思ってなかったんだけど。


自分で額に手を当てると、たしかにほんのり熱かった。





「んー、じゃあ部屋に戻って寝るよ。早めに寝たら明日には治ってるだろうし」



心配させてしまっていることもわかったし、と思いつつ身の回りのものを片づけているとレンくんがそれをすべて横から奪っていった。




「オレがするよ。それと、夜中に高熱が出るかもしれないから龍也さんに看病する許可ももらってくる」



てきぱきと片づけながらそう言ったレンくんに思わずぎょっとしてしまった。



「れ、レンくん? 大丈夫だよ、そんなそこまで…」



「駄目だ」



ぴしゃりと却下されて、私は肩を竦めて彼を見上げた。


怒ってるのかな、と思ってレンくんを見ていたら、きつい目をしていたレンくんがふっと息を吐き出して私の頭を撫でた。







「・・・・・・お願いだから、自分の体を大切にして。君も、オレと立場が逆なら同じことを言うだろう?」




切なげな表情と声、そしてもっともな物言いに、私は「ごめんなさい」と謝ったのだった。


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