うたプリlong夢
□あなたのために7
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頭を冷やすために海辺に出ていた。
自分が落ち着いたと思ったから、彼女に電話をかけて。
前の自分なら、きっと彼女の演技に騙されていただろう。
なんでもないような声を出して、なんでもないような顔をして、自分が傷ついていても自分が不安でも先にオレの心配をしてくれる。
でも、落ち着いてみたらさっきの彼女は顔色を悪くして……泣きそうな顔をしていた。
オレの言葉に何度も応えようとして、でもすぐに口を閉ざして。
行かないと、言ってくれようとしたんだね?
でも自分ではままならないんだね。
だからそう安請け合いしたら、オレをさらに傷つけると思って言えないんだね。
―――――なんて、いとおしい。
同時にそこまで彼女にそこまで気をつかわせていた自分に呆れかえる。
どうして彼女のことになると、自分の目は曇るのだろうか。
彼女もオレと同じくらい、いやオレ以上に怖がっていることに気が付いて、オレは力強く言葉を重ねた。
「名無しさんが嫌でないのなら、オレは君が離れていかないように繋ぎ止めておくよ」
少し虚勢も張っているけど、強がらせて。
君を、守りたいんだ。
心もすべて優しく包み込めるように。
君が安心して笑えるように。
『レン、くん……』
声に涙がにじむ。
彼女が泣くところなんて再会した時にしか見たことがなく、微かに動揺した。
『……レンくん、会いたい……っ!』
涙交じりに切なくそう叫ばれて、心が震えた。
「すぐ行く」
――――今、きっと初めて彼女に求められた。求めてもらった。
助けて、と手を伸ばしてくる彼女の手をしっかりつかむために、オレは走り出した。
電話越しに自分がいる場所を伝えて少し部屋から出てきてほしいと伝えて。
何度も「レンくん」と名前を呼ばれて早く早くと足を動かす。
「今、行くから……っ!」
走って走って走って。
息を整える間もなく、木の幹に背を預けて不安げに立っていた彼女を見つけオレは彼女に微笑んだ。
「は……っ、ほら、来た、だろ……っ?」
「……っ」
かっこ悪いほどに肩も胸も上下して、汗だくで、でも彼女はオレの方に腕を伸ばしてくれた。
「レンくん……っ」
その細い体を力いっぱい抱きしめる。
彼女が抱きしめられていると、そう感じる強さで。