うたプリlong夢
□あなたのために7
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友ちゃんと春ちゃんがぐっすりベッドで眠っている横で、私はテラスに出て月を見上げていた。
――――タイムリミットが来るの?
じゃあそれはいつ?
自分の中の焦燥をぶつけるように、目の前の楽譜に思いつくまま曲を連ねていく。
――――離れたくない。一緒にいたい。ずっと。ずっと。
激情のままの音になっているのを自覚しながらかりかり書き込んでいると、手元のケータイが着信を告げた。
こんな時間に、と思って画面を見ると……「レンくん」と出ていた。
複雑に高鳴った胸を押し隠して、震える手で電話に出る。
「……はい」
『……さっきぶり。もう寝てた?』
「ううん。月、見てた」
さっきよりだいぶ落ち着いたレンくんの声に、私もすこし落ち着く。
『そう。オレも月を見ていたんだ。綺麗、だね』
「そうだね」
お互いきっと何か言いたいことがあるのに、どうにも言いだせない雰囲気で沈黙が続く。
でもそれは不快ではなかった。
小さなケータイによって、今二人の空間は繋がれていて、不思議と彼と一体になれた気がして……二人とも月を見上げているんだろう。
『……ねぇ』
「なぁに?」
『……オレは、君が好きだよ』
「!」
『間違いもたくさん犯してしまったけど、順番も間違えてしまったけど、君のことが好きだ』
「レンくん……」
態度では示してくれていたけど、あの日に告白されてから「好きだ」と伝えられることはなかった。
自戒しているかのように。
『名無しさんが嫌でないのなら、オレは君が離れていかないように繋ぎ止めておくよ』
「!」
さっきの不安定なレンくんからは思いもつかないような力強い言葉。
弱さも、強さも、兼ね備えた人になったんだ、と子供が成長したかのような感慨を覚えた。
でもレンくんは、私の子供じゃない。
一人の、男の人だ。
『君を一人になんてさせない。他の誰かになんてやらない。君を幸せにできるのは……オレだけ、だからね』
逃がさないよ、とほんの少しおどけたように告げたレンくんの声に心が震えた。
――――気づかれてる。
一人になるのが怖いこと。
離れてしまうのが怖いこと。
行かないでと言われて行かないよと答えたいのにできないこと。
強引にでもいいから、誰かに……レンくんにこの世界に繋ぎ止めてほしいこと。
――――……ああ。
私、レンくんが好きだ。
「レン、くん……」
声に涙がにじむ。
電話の向こうで微かに動揺した気配が伝わって、いつもの私だったらそこで「なんでもないよ」と言って電話を切っていた。
でも。
「……レンくん、会いたい……っ!」
涙交じりに半ば叫ぶように伝えたら、レンくんは「すぐに行く」と言ってくれた。