うたプリlong夢
□あなたのために5
1ページ/6ページ
【18話】
彼女が放った言葉の強さと、神宮寺が放った怒りの言葉に荒れた雰囲気の教室から二人が連れだって出ていった。
二人がでていくと、微妙な空気ながら教室の中がざわざわと騒ぎ始めた。
本気で怒った神宮寺の姿に驚く者もいれば、かっこいいと騒ぐ者も。
だがそれは今まで神宮寺にさほど関心を抱いていなかった者たちだけが話していることだった。
神宮寺に激しい言葉を浴びせられ放心する女子たちを眺めながら、俺も帰るべく自分の荷物を手に取った。
「ああああああの、聖川様っ」
「…どうした、七海」
焦ったように声をかけてきた七海に首を傾げると、彼女はどうにも心配そうな顔をして「大丈夫ですか?」と尋ねた。
その言葉に、俺ははっと息をつめて苦笑した。
――――気づかれていたか。
「……気にするな」
大丈夫、とは言えないかもしれないが。
微かながら笑みを向けると七海は少しだけ安心したように笑みをもらした。
「また明日」
手を振って背を向け、教室を去る。
脳裏に浮かぶのはさきほどの教室でのやり取りだった。
最初教室に入った瞬間何が起こっているのかわからなくて、珍しく怒りをあらわにした名無しさんさんに驚いた。
だが黒板に抱えれた内容を見て。
女子の頬を叩いたらしい彼女を見て、俺はSクラスへと走った。
最終的にこの場を収められるのは神宮寺だけだろうと思ったから。
彼女一人でも相手を言い負かすことは出来るかもしれない。
でも明日から彼女が陰口をたたかれずに過ごしていくには神宮寺が必要だと思った。
正直俺も彼女への嫌がらせに行きあうたびに神宮寺への苛立ちを募らせていた。
なんで気づけない。
どうして助けに行けない。
唯一、大切な人ならば、何故。
だが気づいたならば。
彼女が浴びた言葉を、行為を、悪意を。
知れば怒るだろうと思っていた。
しかし実際に神宮寺が露わにした怒りは俺の予想を大きく上回り、周りを凍りつかせるほどだった。
それほど彼女を愛しているのだと、思わずにはいられないほど。
それがなぜかひどく悔しかった。
.