うたプリlong夢
□あなたのために3
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事情を話すと面白がったボスが「入学しちゃってくださーい、学費は出世払いでどーですかぁ?」と言ってくれて、名無しさんはありがたくその申し出を受けた。
残る問題は住む寮なんだけど。
「困ったわぁ……寮に空きがないのよ」
頬に手をあてて困った顔をするリンちゃんに彼女は眉をひそめた。
「なんとかならないんですか?」
「うーん、難しいわね……あ、そうだ!」
ぽん、と手を叩いてリンちゃんは楽しそうに名無しさんに詰め寄った。
「私の部屋に来て一緒に暮らすのはどう? 広いし部屋も余ってるし、いいと思うんだけど!」
きゅ、と名無しさんの両手を掴んだリンちゃんを見て、オレは一気に不愉快な気分になった。
戸惑って愛想笑いを返す彼女を奪い返すように腕に抱え込んで彼との接触を離す。
「それは駄目だよ、リンちゃん。それと、名無しさんに気安く触らないでくれ」
「れ、レンくん……」
顔を赤くして困った顔で名無しさんがオレを見上げてきた。
でもそんな彼女に笑顔を見せる余裕もなく、オレはリンちゃんを睨みつけて牽制した。
一瞬ぽかんとしたリンちゃんはすぐににんまりと笑って「じゃああなたの部屋にする?」なんて言ってきたものだから、オレは不意打ちに大いに戸惑ってしまった。
自然と顔が熱くなるのを感じながらあえて名無しさんの顔は見ないようにする。
「……からかうなよ、リンちゃん」
「あらぁ、年相応なところもあったのね〜! いいこと知っちゃった!」
嬉しげにされて舌打ちしたい気分を抑え込みながら、オレはさらに言い募った。
「大体、この間二人退学になって女子寮の部屋が一つ空いてるはずだよ」
「……レンくん、物知りだね」
感心したように名無しさんに言われて、それにもまた動揺する。
関係を持った取り巻きの子に教えてもらった情報だから。
オレをからかうだけが目的だったみたいで、リンちゃんはその部屋を名無しさんの部屋にすることを約束して去って行った。
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