うたプリlong夢

□本質を見抜く人
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【0話】







パートナーが決まらない、と日向先生に相談したらあっさりと「そりゃ無理だ」と言われた。
行動が遅すぎてみんなパートナーが決定してしまって私一人があぶれる形になったのだと。






「ま、卒業オーディションの点数は辛くなるだろうが一人で出ていいってことだから」







軽く言われて抗議したんだけど、日向先生は「ダイジョウブで〜す、今は見守る時期なので〜す!」って学園長が言ったからいいんだろと返されて今に至る。





















「今日もいい天気だよねぇ……」




誰とも打ち合わせしなくていいっていうのは楽だよね。





そんな風に思ってたまたまだだっ広い学園の庭(草原?)を歩いていると、具合が悪そうなイケメンを見つけた。








「……っ」










形のいい額ににじむ冷や汗に少し焦って(だってこんな大きな男の人私一人じゃ保健室に運べない)、買ったばかりの冷たい水でハンカチを湿らせて彼の額にあてた。





「……ん」






うっすら目を開けた彼に慌てて弁解する。




「余計なお世話かと思いつつ、すみません。気になって……」





「…わかっているなら、放っておいてください……私は大丈夫ですから」




「……」





荒い息で返されても頷きかねる。



というか、放っておいても死にはしない、という意味では「大丈夫」なんだろうと思うけど。




「私が気になるから勝手にしてます。気にしないでください」



「……」






気だるげな中にうっとうしそうな色を含んだ視線を向けられて、怯みそうになりながらも彼の顔色が真っ白なことが気になった。





(……顔色悪)






しかも、と思う。








声が嗄れそうだ。







「……」






もう何を言い返す気力もなさそうに目を閉じたその人を残して、私は購買へと走った。





「ある程度なんでもおいてるからあると思うんだけど……」



















「ん……」

唇に冷たいものが押し当てられて再び目が覚めた。

「少し口開けて?」

知らない顔に不審な思いが募る。

「君、アイドルコースでしょ? 喉つぶしたら、練習すら出来なくなるよ」

これ、かき氷。喉のとおりはいいはずだから。
真剣な目で見られてわずかに驚く。
ひやかしでもなさそうだ、と息を吐いた。
よほど弱っているらしく、普段の自分だったら断固拒否してはねのけていただろうになんとも素直に口を開けて。

「ん…」

あ、食べれる。
正直水さえ飲みこむことが辛かったのに、するりと喉を通って胃にたどり着いたかき氷を意外に思った。
目の前の少女はわずかにほっとした顔をして、再び私の口にかき氷を運んでくれた。
誰かに……音也やレンに見られたら確実に冷やかされて面倒なことになる。
そう思いはしても、気だるい腕や体をこれ以上動かす気にはなれなかった。
何故か彼女が世話を焼いてくれることに甘えてみる。

「体調管理も仕事のうちだよー、なんて偉そうなこと言えないけどさ、ちゃんとご飯食べてる? その身長でそれだけ筋肉ついててその細さって倒れても無理ないよ?」

親身になっているようで世間話のようにさらりと流されるその言葉は他人の言葉を煩わしいと思う私の心にもするりと入り込んだ。
どこか母のように私の世話をやく彼女に促されるままかき氷を全て食べて薬も飲みこんで。
自分にしては珍しいと思った。





0話・END
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