うたプリlong夢
□あなたの背中
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【1話】
「あ」
いつも、ぴんと伸びた背筋に胸がときめいた。
綺麗な綺麗な人。
聖川、真斗くん。
私の……好きな人。
お兄ちゃんの、お友達。
「あ!」
お兄ちゃんだ!
久し振りに見た姿が嬉しくて駆け寄りたくなって慌てて階段を下りた。
でもお兄ちゃんを見失わないようにってそっちにばかり目がいってて足下が見れてなくて、気づけばがくんと態勢を崩していた。
「きゃあ!」
落ちる。
そう思って血の気が引いた。
ぎゅ、と目をつむって痛みを覚悟する。
けど痛みも衝撃も何も襲ってこなかった。
ただ何か温かなものに包まれただけで。
「……?」
「大丈夫か?」
耳元で声がした。
低い、じんわりとしみこむような声。
雪を溶かす陽だまりのような。
こわごわと目を開けて声のした方を見ると、泣きぼくろのある日本男児が私を間近で見つめていた。
「ぁ……っ」
聖川、真斗くんだ……っ。
いつもお兄ちゃんと一緒にいるところを見かけてたから知ってる。
密かに憧れていた人に間近で見つめられて私は息をするのを一瞬忘れた。
でも慌てて彼から距離を取ろうとする。
「すすす、すみませ……いっ!」
ずきん、と足首が痛んで顔をしかめると、彼が眉間にしわを寄せた。
「足を痛めたのか?」
「い、いえ……大したことじゃ」
歩ける。
歩けるから大丈夫、と言おうとしたのに。
「ぇっ?」
浮遊感とともに抱き上げられた。
「無理をすると足の骨に異常が出る。女性なのだから体は大切にしろ」
諭すようにそう言われて私は呆然としつつもこくりと頷いた。
「…いい子だ」
すると、ふわりと目じりを下げて微笑んでくれた。
その瞳にノックアウト。
誰が書いた歌詞だった?
まさにそんな気分だった。
まるで騎士みたいな人。
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