うたプリlong夢

□男気全開で君が好き5
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「ああああああああ、の……っ」




おどおどしながら私の両腕を抑えている龍也さんに声をかけると、ちらりと冷たい一瞥を受けた。





お、怒ってる……っ!



それはそうだよね、と思いつつ、私は腕を引かれて連れてこられたマンションらしくところに首を傾げていた。











龍也さんは慣れた手つきで部屋の鍵を開け私を中に引っ張りいれる。








「ここ…」






「俺の部屋だ」





「へ!?」






「……何か文句でもあるのか?」






不機嫌Maxの顔で睨まれてしゅんとする。







「ないです……」





入れよ、と促されておずおずと足を踏み入れる。






あ……。





――――龍也さんの匂いだ。





ドキドキした。



だって、初めて入る。




男の人の部屋……龍也さんの部屋。



無駄なものはあんまりなくてシンプルな部屋だな、と思って私はドキドキを重ねながら中へと進んで行った。







「こっちだ」





「あ、うん…」





促されるままに龍也さんが開けてくれたドアをくぐる。




そして部屋の真ん中に堂々と鎮座したベッドに頭が噴火しそうになった。





「りゅりゅりゅりゅ、龍也さ……っ!」





顔が熱くなる。




どうにかして怒りを解こうとする前に、どさりとベッドに押し倒された。












「……」







私を見下ろす不機嫌な顔。






でもそれだけじゃないと気づいてしまった。






―――悲しそう。



「…どうして、電話取らなかった? メールも返してくれなかった……」





切なげな頼りない声にとくりと鼓動が鳴る。





「睦月にも馬鹿にされた。一緒にいるときに様子は変じゃなかったのかよって……女関係はクリアなのか、劣等心を刺激しなかったか」






「……龍也さん」






この人は全身で、伝えてくれている。




きゅ、と胸の奥が掴まれたようだった。




この人が愛しい。







この人がいないと、私はもう生きてはいけない気がする。







「何かしたなら、言ってくれよ……毎日会えるわけじゃねぇのに、メール返ってこなかったら心配するし、辛い……」






うなだれて私の肩口に顔をうずめた龍也さんにはっとする。





「ごめんなさい、龍也さん……!」




「…」









「私街中で月宮林檎さんと腕を組んでる龍也さんを見て勘違いしちゃったの……っ!」








決死の覚悟で叫んだ私の言葉に龍也さんは少しづつ顔を上げてきた。




ものすごく変な顔で私を見ると、固まったまま何かを考えてるみたいだった。




そして脱力したように体から力が抜けた。





「……くっそ……っ! お前がほぼテレビ見ないって忘れてた……っ!」





若干悔しそう……。





宥めようと背中を叩きながら、私は小さく呟いた。







「……ごめんね」




「…何がだ」




「自信、もてなくて」




「……」




「好きすぎて、不安になるの……」





どうしても拭えない、一般人という劣等感。



それに対して美人でもないし取り柄もない。



きっと言っても「気にするな」って言ってくれる。わかってるけど、心が納得しないの。





―――本当にそれでいいの?






「……俺はお前の作るご飯が好きだ。美味い。出来れば朝も晩も食べたい」




「……え?」




「仕事で疲れ切ってぐったりしてる時でもお前の顔を見るとほっとする。癒される。もう少し頑張るかと思える」





「りゅ、龍也さ……」




「正直家に帰ってお前が待っててくれたらどれほどいいかと思うときもある」




「龍也さん……」




「……特別な何かを持ってなくちゃ俺の隣にいちゃダメなのか? 俺はただ……お前が笑ってくれてたらそれでいいのに」





まっすぐに目を見つめて言われた言葉に、私はそっと息をついた。




どこまでも真摯に気持ちを伝えてくれる龍也さん。





言ってくれる言葉は嬉しい。本心だろうなと思う。だって下手な嘘は嫌いな人だから。





「……私」





「……」





「私が、覚悟を決めないといけないのね」





「……ああ、決めちまえ。一生、俺についてくるってな」




なんて色気のない、雰囲気のないプロポーズなんだろう。




でもそこまでさせたのは私自身だ。




覚悟を決めないと……誰に何を言われても、思われても、揺らぐことのない覚悟を。






「……また揺れたら、支えてね? 見捨てないでね?」





「お前こそ。俺を見捨てて楽な男に走るなよ?」




顔中に口づけを振らせながら放たれた言葉に私は苦笑した。





冗談めかしてるけど、目の奥に嫉妬が見え隠れしてる。





「……当たり前じゃない」




きゅ、と首筋に抱き着く。





ついさっきまで乱れきっていた心が、しんと静かに……違う意味でドキドキしてる。







徐々に範囲を広げていく口づけに私はきゅと目を閉じた。








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