うたプリlong夢

□男気全開で君が好き4
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洗い物を片づけていると、リビングでテレビを見てる睦月が音量を上げた。





「姉ちゃん、この人すごいよな」





「んー?」








促されて画面を見た私はふと手を止めた。







あの日、龍也さんと腕を組んでた女性、だ。







ああ、やっぱり綺麗。やっぱりアイドルだったんだ。






輝くような笑顔に自分がいっそうみじめになる。





もっと綺麗だったらよかったのに……。












「月宮林檎、本気で綺麗だよな」






「……そう、だね」






「これで男ってのがすごすぎる……俺が女装したってこんなきれいにならないぜ?」






惚れそう、と顔を赤らめる睦月の言葉に私は首を傾げた。






「……睦月?」





「んー?」







「……その人、女性、でしょ?」









画面をさす指がふるふると震えた。




だって、そんな。




そんなまさか。








「えー? 姉ちゃんだからテレビ見なさすぎだって! この人正真正銘男の娘だよ! 別に男が好きとか女になりたいとかは思ってないらしいけど」











「……っ!」






呆れたように吐き出された睦月の言葉にさぁっと血の気が引いた。






ま、待って?





待って待って待って。






じゃああの日龍也さんはあの人と腕を組んで歩いてただけで、芸能人の友人と一緒に歩いてただけで。










浮気でもなんでもない……っ!?












ここ数日着信を無視し、メールも読まず、避け続けていた恋人の顔を思い浮かべる。









龍也さんは優しいけど、理不尽なことにたいしてまでは優しくない。




というか、怒る。





最初告白を受けたときの私の返答にもものすごーくご立腹だったし。






慌てて濡れた手を拭き携帯を手に持った。














メール21通。着信15回。










きっと忙しい仕事の合間をぬって連絡をくれているんだろうことがわかって余計に罪悪感とか恐怖心が湧き上がった。







こくりと喉を鳴らして覚悟を決めると震える手でこわごわとメールを開く。











「なんか忙しいのか?」


「今度休みとれそうだから睦月も連れてどこか行こう」


「何かあったのか?」


「どうして電話に出ない?」


「オレ何かしたか?」


「声が聴きたい……」


「電話に出てくれよ」


「何があったのかわからないとどうしようもないだろ」


「お前不足で死にそうだ」


「なぁ、頼むから」


「家の電話も出ないのか……睦月が「自分で考えろあほ」だとよ……考えても分からねぇ」


「おい、いい加減電話出てくれ」


「そろそろ怒るぞ、理由を言えよ」


「そんなに電話に出たくないのか、よーくわかった」












「……あ、怖い……本気で怖い」




怒ってる、怒ってるよ龍也さん……!







青ざめながら最新のメールを開く。





……一時間前。















「逃げるなよ、説教だ」

















「……っ!」




来る!


ここに来る!





「ああああああの、睦月……っ」





お姉ちゃん雲隠れするから、と言いかけたのにリビングに弟の姿はなく。首を傾げた私の耳に荒い足音が聞こえた。



そして。




「名無しさんてめぇ……っ!」



「ひょぇ……っ」



ものすごい剣幕の龍也さんに真剣に怯えた。
だって怖い。



悪鬼のごとく怖い。





逃げる前にとっつかまってしまった。






















(「睦月、今から説教してくるから戸締りしてから寝るんだぞ」)




(「あーはいはい。くれぐれもちゃんと仲直りしてきてくれよな」)



(「睦月、助けてくれないの!?」)



(「この期に及んでまだ言うのか!?」)




(「だ……っ」)





(「あー、泣きそうな顔すんなよ姉ちゃん。うっとうしいから仲直りしろよ」)





(「〜〜〜〜〜〜(いつの間にそんなに仲良くなったのよ)っ!?」)



2012/06/03

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