うたプリlong夢

□男気全開で君が好き2
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「よし、到着。また連絡するよ。遅くなって悪かったな」





にこりと笑って謝る龍也さんに私はきゅっと眉を寄せた。






「どした? そんな困った顔して」












「……龍也さんは、その……言わないなと思って」





「何を?」






「……今日遅くなってもいいだろ、とか。弟なんて一日くらいほっといてもいいだろ、とか」







「……」





自分で言っておきながら恥ずかしくなってくる。





まるで言ってほしいみたいだ。





「ご、ごめんなさい! やっぱり今の忘れて……」






「――言わねぇよ」






「……え?」







「言ったら困るだろ? それに、弟を心配させたり寂しい思いをさせたりしちゃいけねぇよな」







「龍也さん……」







「正直、お前を抱きたくなわけじゃない。でも、それ以上に大切にしたいと思ってる」







まっすぐなゆるぎない瞳で言い切られて、私は胸がじんと震えるのを感じた。









なんて……懐の広い人なんだろう。










「……龍也さん」






「ん?」







「……大好きです。あなたを好きになってよかった」








「!」









素直に思ったままを告げると龍也さんは驚いた顔をして……顔を赤らめた。






「お前……」







龍也さんはすっと視線を逸らせて大きな手で顔を覆って俯いた。








「え? ど、どうかしたの? どこか痛い?」







おろおろと心配して顔を覗き込もうとしたんだけど、龍也さんはくっと私の手を引っ張った。












「っ」











「お前な……煽るなよ。可愛すぎんだろ……」






「え? え?」





「……少し黙れ」






「え…んぅ……っ」








頬に手が添えられて熱い唇が重なる。







吐息さえもこぼさないとばかりに深く重ねられた唇。





震える指先で彼のジャケットをきゅっと掴む。拒むことなどできない。






この口づけを確かに嬉しいと思う自分がいるから。











「ちゅ……くちゅ…はぁ……」




「ん……っ」






離れていった舌が銀糸の糸を切ったのを見て、かあっと顔に熱が集まった。













……恥ずかしい。





「……好きだぜ」





「私も……好き、です」






これ以上ないほどの幸福をこの身に受けている。



















芸能人だなんて知らなかった。だってほとんどテレビを見ないから。





ただ通りすがりの親切な人だと思って……まじめで人の話を聞くことのできる人だと気づいて……。








「私、もう龍也さんがいないと生きていけないかもしれない……」






「そりゃいい。俺なしで生きれないようになれよ」






笑い交じりで言われて、広い胸に顔を預けながら私は目を閉じた。




























私……もしこの人が私の隣からいなくなってしまったらどうするんだろう……。





幸福が落とす恐怖
2012/06/03

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