三国恋戦記夢

□分かりにくい恋慕の情
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「はぁ……」






「……ため息をつくぐらいなら玄兄のところに行って来たらどうだ?」


「……なんでそんなこと言うんですか」



「辛気臭いからだ」



「……雲長様のいけず」



「……いけず、とはどういう意味だ? まぁなんとなく察せられるが」



「じゃあ察してください」



「……別にいけずなわけじゃない。ただ人知れずため息をついたって事態は好転しない」



「……」



やっぱりいけずだ……。


そんな正論をぶつけられたら顔を伏せるしかないじゃないか。


たしかに彼の執務室にお邪魔している私がいけないんだけれども。





「そもそも妙齢の男女が同じ部屋に二人きりというのはだな」




「不埒っていわれるんでしょ? でも大丈夫、扉開けたままですし」



「……そういう問題じゃない」


疲れたようにため息をつかれてしまった。
いえ、ダジャレじゃなくて。



「おい、雲長……っ! ……名無しさん?」



「玄徳様……」



突然現れた玄徳様が私の姿を見て眉をひそめた。



……そんなに嫌いなんですか、このやろー……。



心の中で覇気なく呟いてさらに凹む。


ああ、最近凹んでばかりだ。




「どうしたんです、玄兄? 何か火急の用事ですか?」



「いや……」


視線を泳がせる玄徳様に何を思ったのか、雲長様は椅子から立ち上がった。



「はぁ……俺は少し席を外します。俺に用事があったなら思い出しておいてください」



「あ、ああ……」



えー……雲長様行っちゃうの?


思わずすがるような目をして彼を見つめると嫌そうに顔をしかめられた。



ひどすぎませんか、私の扱い……っ?



私たちの視線だけのやりとりを横で玄徳様が睨みつけるような不機嫌な目で見つめている。



……雲長様に色目使ってるとか思われてる?

それはそれで悲しいなぁ……。









「玄兄、頼みますからこの部屋を汚さないでくださいね。特に寝台は」





「は? 雲長の寝台を使うわけないだろう?」



本気で嫌そうな顔をする雲長様ときょとんと不思議そうな顔をする玄徳様。


そして首を傾げる私。


各々が各々の顔を見て不自然な間が空いた。

一人雲長様だけが頬を染めて「すみません」なんてよくわからない謝罪の言葉を吐いて部屋を出て行った。





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