その他夢2
□交錯する思いは持ち越され
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「名無しさん様」
「え? わ、ちょ。んむむむむ……っ」
小さなその体を腕の中に閉じ込めて華奢な手を取って口づける。
そのサクランボの様な可愛らしい唇にも口づけて。
少し顔を離して表情を窺うと、ひどく恥ずかしそうに顔を真っ赤にして狼狽えていた。
それが可愛くて愛しくて、僕は笑いながらもう一度口づける。
顔中にキスを降らせて。
やっと手に入った。
僕のものだと自惚れるつもりはないけれど、でも誰にも渡したくはないという独占欲はしっかりあって。
彼女はずっと僕が好きなのは白鬼院様だと思っていたらしい。
昔、蜻蛉様として手紙のやりとりをしていた彼女。
彼女にも確かに救われていた。
感傷的で、いろんなものを敏感に感じ取る繊細な人。
彼女の手紙を通して、僕は名無しさん様に対する自分の感情に納得した。
名無しさん様の存在と彼女の手紙。
それらの二つは僕に彩る世界を与えてくれた。
彼女ではいけなかったのか。
そう考えても答えは出ず、ただ自分の心が反応するのは名無しさん様だということは紛れもない事実で。
食堂に入ってきた白鬼院様と目が合った。
ほんの少し切なそうに眼を細めた彼女に小さく会釈して、僕は愛しい恋人に向き直った。
「今日は、学校の帰りに食事に行きましょうね。美味しいお店を見つけたんです」
(交錯する想いは持ち越され)
2013/01/10