遥か夢
□手放せない…
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「……名無しさん様」
「ん、なに?」
「……怒っていらっしゃいますか?」
「へぇ?」
きょとん、として銀を見ると、銀は私と目を合わせずにじっと下を見続けた。
「なにを?」
「……名無しさん様を、探しに行かなかったことです」
「探し……って私がここを追い出されたとき?」
「……」
沈黙は肯定の証だと思うんだけど。
「……銀」
そっと銀の頬に手をそえた。
「……私、怒ってるように見える?」
「……いいえ」
「なら、怒ってないと思うんだけど」
「……そうではなくて」
「?」
「……」
「銀」
その声に、私の胸がどきりとはねた。
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