遥か夢
□けんか
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「……」
「……」
上半身をあらわにしてけがの治療を受けていたリズは、眉間にしわを刻みながら考えていた。
なにが彼女をここまで怒らせたのか。
しかし考えても考えてもわからないのだ。
けがの心配はしてくれているのだろう。
いつもなら泣きそうな顔をして痛くないかと聞いてくる。それはそれで幸せなのだが……。
ここまで怒らせたことにはなにか要因があるのだろう。が、リズにはさっぱりわからない。
「……終ったわよ。服、羽織ってください」
「ああ」
……なんどもケンカをしたことはあるが、ここまで怒らせたのはもしかすると初めてかもしれない。
とりあえずリズは、自分の思いつくままに謝罪を口にした。
「……黙っていて、すまなかった。今度からは気をつける」
「……」
その表情をうかがおうとしても、名無しさんはうつむいた顔をあげない。
「……リズは、私がなんで怒ってるかわかってないでしょう?」
「っ」
「そんな状態で謝られても、私は嬉しくないわ」
「ではなぜ怒っている?」
リズが常日頃から言葉足らずなのは名無しさんも承知のはずだ。
たしかにそれをわかってくれるから、と甘えていたのも悪かったのかもしれないが……
「……戻りましょう」
「名無しさん、待ちなさい」
「みんなを待たせてます」
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