遥か夢

□感謝
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「譲くん、顔色悪い……寝てないの?」

「……ああ、大丈夫だから」

「っ、大丈夫なわけない!」


青白い顔で強がられて、私は思わず怒鳴ってしまった。








「名無しさん? なに、どうかしたの?」


「なんだ、大声をあげて」



「ぁ……」

「すみません、何でもないですから」

「ほんとに?」

「ええ。大丈夫です」

……大丈夫なわけ、ないのに……。

お姉ちゃんと話せてうれしそうな譲くんを見たら、何も言えなくなってしまった。




「……」


一人で誰もいない場所に行った譲くんを追いかけるかどうか迷って、私は水を持って追いかけてしまった。
でも。








「ぅ……くっ」






「譲くん!?」

眠りながら苦しそうに呻く譲くんを見つけた。






「だ、大丈夫? 譲くん!」



声をかけて頬を叩いても、譲くんは目を覚まさなくって……。

「どう、しよ……弁慶さんを呼んできたほうがいいのかな?」


おろおろとしながら、譲くんを見ていると、譲くんは片手を私のほうへと伸ばした。


「譲くん?」


その手を握りながら、私が声をかけると、いままで苦しそうにしていた譲くんの顔がすっと穏やかになった。




ほっと、した……けど。

「せん、ぱい……」








呼んだのは、お姉ちゃんで。

私とお姉ちゃんの声はすこし似てるから。

仕方ないのかもしれないけど。












でも。

やっぱりすこし切なかった。
















……私が、譲くんを好き、なんだよ。

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