遥か夢

□わからない人と焼いた餅
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「おぅ」

すこし目を細めて笑うのが好き。





「呼んでる、って言われて来たの。なに?」


ドキドキする胸を無視して聞いた。




「あぁ、まぁな」



さらり、と髪をすくようにして頭を撫でてくれる。
そうされるのが好きなのに、この間のことがまだ頭の中に残ってて、私は身を引いて手をよけた。



「!」



「用事、ないの?」




「……お前、知盛には甘えるくせに俺には甘えないよな」



すごく不満げに言われて私は目を瞬かせた。



「え?」




ぶすり、とすねたような彼に似合わない不機嫌な顔。


はじめて見た顔に驚いた。


えーと?



言葉の真意をはかりかねて私が首を傾げたまま将臣を見つめていたら、将臣は徐々に顔を赤らめて視線をそらした。


「将臣?」





「……俺にも甘えろ」





身長差があるのに頭を引き寄せられて一気に距離が縮まった。




目の前に将臣の厚い胸板がある。



とくりとくりと命の尊い鼓動を刻んでて、それは私の鼓動と同じ早さだった。




私の心臓、いますごくドキドキしてるのに。






同じ?


「こないだ、悪かった……」



「こないだ?」



「妬かせたくてお前のこと放って望美にかまった。悪かった…」




妬かせたい、って……え?

思わず顔をあげるとばつの悪そうな顔をした将臣がいた。


「なにそれ……」




「だから!俺ばっかり妬いてるからお前にも妬いてほしかったんだよ!」
真っ赤な顔でそう言われて、私はぽかんと口を開けた。


「んだよ、その顔は?俺だってなぁ、お前に甘えてほしいしお前にほかのだれにも触ってほしくねぇんだよ!それなのにお前は知盛にべったりだし……」


やきもち、妬いてくれてたの?
私に?

じわじわと胸にひろがったのは安堵だった。


「じゃ、じゃあ私の勘違いでお付き合いしてたわけじゃないんだよね?ちゃんと将臣も私のこと、好きでいてくれてる?」




「……お前、んなことで悩んでたのか?もしかして」


「だ、だって将臣は仕方ねぇなしか言ってない……!」






「……わりぃ、そうだったな」
もう一度、優しく抱きしめられる。









「……好きだ、お前のことが」
「……っ、私もすき……っ」


→おまけ
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