遥か夢

□空からのおとしもの
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「ほら、お土産だよ」
 ヒノエは熊野を離れることが多くなった。







「……ありがとう」
 




自分の住んでた世界でも、自分の住んでた時代でもないところにあろうことかトリップ?してしまったらしいと話をしているうちに分かった。
 

帰る方法なんて探すあてもなく、湛快さんやヒノエが面倒を見てくれるから別に帰れなくてもいいかな、とか楽観視して私は日々を過ごしていた。だって考えても分からないし。




「なんだい、あまり嬉しそうじゃないね?」
「嬉しいよ?すごく。ありがと」


 嬉しくないんじゃなくて……
 ヒノエからもらったものがどんどん増えていく。
 


ヒノエにとって私は新しくできた妹のようなもので、私にとってヒノエは兄のようなもので、兄は女心には明るいくせに妹心には暗いらしい。ものをあげれば喜ぶと思ってるみたい。
 


ただ、さみしい、と思ってしまうのも仕方がないことで。




「……そうだ。名無しさん、少し遠出しないかい?」
「……遠出?」
 私は一も二もなくうなづいた。


 







ヒノエに手をとられて連れてこられたのは岸壁。







 ……?
「ヒノエ?」
「まぁ見てなって」
 



に、と口元を歪めた笑い方が色気のある笑い方よりもなんだかどきどきして、私は示されるままに海の彼方をみやった。
 



少し待っていると。



「う、わぁ……」
 太陽が、水平線に沈んでいく。


 


海面がきらきらオレンジ色にきらめいて、銀色の光とまじって一つの絵みたいにキレイだった。






「す、ご……すごい!すごいよ、ヒノエ!!すっごくキレイ……っ」
 思わずぱっと笑顔を浮かべてヒノエを振り向くと……その景色に負けないぐらいキレイなヒノエがいた。



「だろ?俺のとっておきの場所なんだ」

 
すごく優しい顔をして私を見るヒノエの顔はオレンジ色に照らされて、赤い燃えるような髪もいまはすごく優しい色で……



どきどきと胸が鳴った。


自覚しちゃダメ、ってわかってたのに……
生まれたばかりのヒナ鳥の心境かもしれないって思ってたのに……









もうごまかしはきかなかった。









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