遥か夢

□貴方がすき
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「弁慶さ…………」


部屋を覗きこんで、はた、と動きを止めた。



今日は確か弁慶さんが私の買い物に付き合ってくれると言ってくれたので慣れない化粧を朔に教わって、自分にできる限りのお洒落をしてきた。


しかし今目の前にいるのは床に崩れるようにして眠る、綺麗な人。


目をつむると瞳が隠れ蜜のある言葉も吐かないので、その顔の作りにただただ見惚れる。




……なんて綺麗な人なんだろう。



……しかし困った。



自分の買い物なんかいつでもいいが、ついでだからと譲から買い物を頼まれているのだ。

しかし今まで疲れた様子も見せずに頑張っていた人をわざわざ起こすのも気が引ける。というか起こしたくない。私の気配に気づかないほど疲れているのがよく分かるから。




「……お疲れ様です、弁慶さん」
そっと布団を被せ、それでも起きないことに少し笑いを漏らしながら部屋を出た。




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