遥か夢
□お腹
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なのに。
「だって……女の子から誘われちゃったのに、そんな……俺、頑張るから」
「ちょ」
ひょいっと姫抱きされて、不覚にもきゅんとしてしまった。
……ためにされるがまま部屋に連れ込まれた。
こう、抱きあげる腕もしっかりしてて筋肉質なもんだから、ついきゅんきゅんしてしまう。
しかも今度は目の前に大好きな顔。
いや別に顔が好きってわけじゃないけれど。
好きな人だから顔も好きなのか。なんて程度。
でも今私は確信した。
私、
筋肉好きだ。
うわ、やな響き。
マッチョが好きなわけじゃないだろう。
ただ、景時さんの筋肉が好きなだけ。
きゅんきゅんする。
きゅんきゅんきゅんきゅん……
部屋に連れ込まれ、戸を閉められる。
おいこらまだ真昼間だぞ。
「か、景時さん……」
「怖くないから。俺、出来るだけ、優しくするから、だから……」
切なげな顔で見つめられて、これはもう逃げられない、というか逃げたくないとさえ思う。
だって幻覚かもしれないが、頭のてっぺんに長いお耳が見えてしまった。
しかもしおれながらぴょこぴょこ動く耳が。
……さらにはちらと脳裏を脱いだ筋肉を隠してない景時さんの図がよぎって思考とともに動きが止まる。
見たいとか思ってしまった私はきっと彼よりも乙女じゃない。
彼のほうがよほど乙女らしい。