遥か夢
□苦手な人2
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……頭がパンクしそう。
「……から……」
「……ですが……」
声?
聞いてはいけないと本能が訴えたのに、足は迷わずにそちらへ向かう。
気配を殺して。
「あいつが鬼の仲間じゃないなんてどうして言い切れるんだよ!?」
(!!)
イノリの声が大きく響いた。
「イノリくん、落ち着いて!!」
「そうだ、落ち着きなさい。あんまり大声を出すものではないよ」
「んだよ、友雅だってそう思ったんだろ!?」
「まあ、確かにね。彼女に全信頼をおくなんて愚かなことは止めた方が良いのではないのかな?」
(……あ)
しまった。
一番言われたくない人に言われてしまった。
(けっこうショックだな)
胸がじくじくと痛む。
「あの方は……鬼の仲間なんでしょうか?」
「永泉様、私にはそうは思えません」
「あの女に鬼の気配はない。だが……」
「なんだよ、なんかあんのか?!」
「神子殿にあまり近づけすぎるのは危険かと……」
「頼久さん!?」
「僭越ながら言わせていただきますと、私達の役目は神子殿をお守りすることが第一。さすれば危険分子は排除すべきです」
はいじょ……排除……。
この世界に慣れてきた、と。
大分楽しくなってきた、と。