遥か夢
□苦手な人2
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「うにゅう……」
眠い。けれども起きてしまった。
この時代の夜は怖い。
確かに月明かりは現代とは比べ物にならいほど綺麗だが困ったことにそんなに暗闇が得意ではない。
それに……灯りが少なすぎて、夜は嫌なことばかり考えてしまう。
この世界には自分は一人なのだ。誰かに呼ばれたわけではない。
ただの異端者。
あかねちゃんみたいに龍神の神子として「するべき」ことも「守ってくれる」人も、何もない。……あんな風に素直に物事を見てこの世界を救うなんて面倒なことをしたいというわけではないけれど。
自分に出来るとも思わないけれど。彼女は彼女で大変なのだと知っているけれど。
……私はただの異端者。
屋敷の中をぷらぷら歩く。
こんな変な行動を取るべきではないと知っていたがいかんせん一人で部屋にいると頭がパンクしそうだった。
……彼女は責任を負っているから守られる。
そんなこと分かっている。
でも気持ちが納得しない。
……友雅さんなんて、見ているだけでいいと思おうとしたのに。
あかねちゃんや藤姫にたいする甘い笑顔や甘い態度を見ていたら、自分に対する気まずげな態度を見ていたら。