遥か夢
□一歩ずつ
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「……」
「固まったまま驚くのはやめていただけますか? 名無しさん。それなら声を出して驚いてくれたほうがよほど……」
「ええ!? アーネストって19歳だったの!?」
「……」
「いい度胸ですね」
「だって驚いていいっていったじゃない」
「そこまで驚くことですか? 大体、日本人と私たちとでは成長の仕方も違うのですから私の見た目と年齢が合わないことをそこまで驚く必要はないと思いますよ」
「でもそれにしたって驚くでしょ? だってさぁ……エセ紳士だよ?」
「失礼ですね。どこがエセですか」
「だって……あー、でもごくごくたまにはしゃいでるときがあるよね? あれ若い振りしてるんじゃなくって実際若かったのか」
「……ずいぶん失礼なことを思われていたようですね」
「えへへー」
「えへへじゃありませんよ、まったく」
「……」
「なんです? まだ何か言いたいことでも?」
「ううん。アーネスト、私には隠れて英語で悪口つぶやかないから、うれしいなと思って」
「! ……何を言っているのかわかる人にわざわざそんなことを言ったりはしませんよ」
「ゆきにはするじゃない?」
「あれは……」
「私には普通に本音でしゃべってくれてるんだなぁ、って思えてうれしいよ」
「……あなたはごくごくたまにかわいいことを言いますね」
「え、それ失礼!」
「お互い様でしょう」
「うー……だってほんとにアーネストって19に見えないんだもん」
「じゃあいくつに見えるんです?」
「軽く25には見えるね!」
「へぇ、そうですか」
「うん!」
「私が19歳なんて若造だというよりも、25歳の方がよかったですか?」
「え? ううん。どっちでもアーネストはアーネストだから。だいぶ驚いただけで、年齢は関係ない」
「ならよかった」
「アーネスト?」
「なんです?」
「なんか、ほっとしてる?」
「……さあ。どうでしょうか?」
「……なんで私いま手を握られたんでしょうか?」
「考えてください」
「……いまからお説教するから?」
「……ふふ、違いますよ。ただ単に、手を握りたかったからです」
「……なんで?」
「さて、なんででしょう?」
「……さっきからなぞなぞみたい」
「自分で気づいてもらえなければ意味がありませんからね」
「?」
―――――――
関係を前進させるには一歩ずつ
「……なんか距離近くない?」
「いやですか?」
「いやじゃない、けど……」
「じゃあ大丈夫」
「?」
2011/4/11