遥か夢
□あいくるしい
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「ゆきはね、甘いもの大好きだよ」
「……そう、なのかい?」
「うん。女の子はたいてい好きだと思うけどね? あ、あとお花も好きなはず」
「花……」
私の言った「ゆき情報」をさらさらと書きとめていく姿にいっそ感心してしまう。
「……桜智さんってマメだね」
「……………? それは……君の世界の言葉、かい?」
「あ、うん。えっとね……細かいことも厭わずになす人のこと、かな?」
ちょっと違うかもしれないけど……難しいよ。
「それは……悪いことかな……?」
「うーん……悪いことじゃないと思うけど……私はマメな人の方がいいなと思うよ?」
「……そう?」
「うん。ゆきもそうじゃないかな?」
「…………なら、よかった」
……ゆきの話をすると華がほころぶように笑う桜智さんに、胸がときめいて……すぐにきしりと音をたてた。
「ほんとに……好きなんだね」
「ああ……私は……ゆきちゃんが……好きだよ……」
「……うん」
「……どうかした……?」
「え?」
「悲しそうな顔……」
そっと頬にあてられた手に、これ以上ときめいてはいけないのにときめいてしまった。
「……大丈夫」
大丈夫。
まだ大丈夫。
まだ我慢できる……だから。たとえ自分のことを見てくれなくても、彼の側にいたいと思う。
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