遙か夢弐
□さみし夜
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「落ち込んでますね、土方さん」
「うるえせぇよ」
酒を片手に小さく首を振る土方さんの肩に私は頭を寄せた。
「かわいい弟が手を離れて、寂しいんですか?」
「別に手を離れたわけじゃねぇよ。すぐに帰ってくるさ」
「もう……」
私はぐいっと土方さんの顔を両手で包むと目を合わせた。
「寂しいなら寂しいって言っていいんですよ?」
「……ったく」
困ったように土方さんが切れ長の瞳を緩ませた。
そして私の肩口にこつりと頭を寄せる。
「お前には、かなわねぇよ」
「これくらいはなきゃ、土方さんの彼女なんてやってられないでしょ?」
「違いねぇ」
くすりと笑って土方さんが私の体に両腕を回した。
甘えるような仕種に、だいぶ弱っているらしいと思って苦笑する。
「でも総司くんにも好きな人が出来たか……白龍の神子様ですって?」
「……ふわふわしてるくせに、けっこう芯の強いお姫さんだよ。総司にはもったいねぇ」
「逆にお似合いなんじゃない?」
くすくすと笑うと土方さんがふと不穏な動きを見せた。
「ちょ……っ! ここ縁側……っ!」
「誰も通らねぇよ」
「だからって……っ!」
「……甘えさせろよ」
言葉通りに甘えるように唇を寄せてくる土方さんを、私は諦めて抱きしめた。
「……総司が少しの間いなくても、俺にはお前がいるから寂しくなんてねぇよ」
言い聞かせるような言葉が寂しい寂しいと言っているようで、私は土方さんが寂しくないように抱きしめる力を強めた。
2011/9/21