遙か四
□君は誰がもの
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かわいそうな女性だった。
戦場で愛しい男を失って呆然とし、怨霊に殺されかけていたところをオレが助けた。
でも……彼女はそのまま見殺しにしてくれていたらよかったのにと嘆いた。
全てを否定し、全てを拒否し・・・・・・。
「ふぅ…」
「あ、ヒノエくん! あの人の様子はどう?」
「神子姫様・・・・・・どうもこうも、芳しくないね。何も口にしようともしないし、衰弱していく一方だ」
疲れた心を押し隠して肩を竦める。
嘆き「殺して」「死なせて」と懇願する彼女は見ている方が辛い。
「・・・・・・助けない方が、彼女にとって良かったのかな?」
くす、と自嘲めいた笑みが口に上る。
神子姫様は驚いたような顔をして、そしてきゅっと表情を引き締めた。
「そんなことない。絶対、生きてた方がずっといいよ。それに」
「それに?」
「・・・・・・ううん、なんでもない。ただ、ヒノエくん、諦めないで。彼女のためにも、ヒノエくんのためにも」
凛としたその表情。
彼女はいつだって、全てを知っているような顔をして強い言葉を紡ぐ。
「・・・・・・心がけるよ」
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