乙女ゲーム夢4
□無言恋愛
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春うららか。
縁側で庭を眺める二人にはぽつぽつとしか会話がなかった。
「今日は暖かいな・・・」
「もうすぐ桜ですね」
「ああ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ねーぇ」
「!」
「総司か?」
「君たちそれで楽しいの?」
「何がだ?」
「黙ったまま二人で過ごして楽しいの、って」
呆れを滲ませた総司の問いかけに二人は目を合わせて、そしてほんの少し微笑んだ。
「ああ」
「ええ」
そして同じ具合に飛び出た言葉に肩を竦め、総司は「楽しいならいいんだ。お邪魔したね」と言って二人に背を向けて廊下を去って行った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「さっき何してたんだ、総司?」
「ああ、左之さん。あの二人に楽しいかって聞いてたんだよ」
「へぇ」
「・・・・・・別にべたべたしてるわけでもないのに、なんであんななんとも言えない雰囲気を醸し出すんだろうね。なんていうか、あてられる」
はぁ、とため息交じりに肩を竦めた総司に左之助はくすりと笑った。
「仲良きことは美しきかな、ってな」
(無言恋愛)
2013/03/01