乙女ゲーム夢
□愛の深さ
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「え、ホストクラブ?」
友人の誘いに思わず私は顔をしかめた。
ううーん、興味がないといったらウソになるんだけど。
恋人に悪い気がしてしまう。
「行こうよ! ぜったいに名無しさんも気にいる人がいるから!」
「……わかったよ」
渋々うなづいて、私はカバンの中からケータイを取りだした。
私には婚約者がいる。正しくは許嫁。
それなりの関係でそれなりのことをして今現在もそれなりにお付き合いしている。冷めている関係かと聞かれればそうなのかもしれない。
……だって、ねぇ?
宮本惣一郎という華道の家元出身の彼は自由気ままで女性に関するうわさ話は絶えずある。私の耳に届かないように配慮はしているつもりらしいけど、人の口に戸は立てられないというから……。
「……今日もなし、ね」
最近は連絡すらまともに寄こさない。
彼の自宅がどこにあるかも知らないし、いつも連絡してくるのは彼の方。
さみしい、し、いやだ、とも思う。
でもそれを言えるだけの素直さは彼と付き合ううちに失くしてしまった。
でも気兼ねはどうしてもしてしまうのだ。